展示会のブースというと、商談を取るための場所を思い浮かべる方が多いと思います。ところが、IRフェアの展示ブースは目的がまったく違います。来場するのは取引先の候補ではなく個人投資家であり、その場で契約が決まるわけでもありません。
そのため、一般的な展示会と同じ考え方で設計すると、体裁は整っているのに来場者が立ち止まらないブースになりがちです。
この記事では、IRフェアで目を引く展示ブースをつくるために意識したいデザインのポイントを、実際の出展事例にも触れながら、専門用語をできるだけ使わずに整理しました。出展を検討されている広報・IR・総務のご担当者様の参考になれば幸いです。
目次
01IRフェアの展示ブースは「商談を取る場」ではない
一般的な展示会のブースは、名刺の獲得枚数や商談件数で成果を測ります。予算を通すときも「この出展で何件のリードが取れるか」が説明の軸になります。
一方、IRフェアの来場者は個人投資家です。国内最大級の日経・東証IRフェア(旧・日経IR・個人投資家フェア)は東京ビッグサイトで開催され、多くの上場企業がブースを並べます。ここに集まっているのは、自社の商品を買ってくれるお客様ではなく、自社の株主になり得る人たちです。
つまり、IRフェアのブースで得たいものは受注ではなく、次の3つになります。
1. 会社の名前と事業内容を知ってもらうこと
2. 何で稼いでいる会社なのかを理解してもらうこと
3. この会社なら応援したいと思ってもらうこと
デザインの評価軸も、これに合わせて変わります。「かっこいいか」ではなく「伝わるか」です。
初めて出展される企業からよくうかがうのが、名だたる企業が並ぶ会場のなかで埋もれてしまわないか、という不安です。同時に、目立たせるために会社のトーンを崩したくないという要望も出てきます。この2つをどう両立させるかが、IRフェアのブース設計における最初の課題になります。
デザインの前に決めるべきこと
ブースの見た目を考える前に、誰に何をわかってほしいのかを言語化しておく必要があります。ここが曖昧なままデザインに入ると、見た目はきれいなのに来場者が素通りするブースになります。最初に取りかかるべきは、この整理です。
02遠くから見つけてもらうための上部造作という考え方
会場に入った来場者が、あるブースを認識するまでの距離はかなり長めです。人で埋まった通路では、腰から下の情報はほとんど見えません。だからこそ、ブースのデザインは「遠くから見えるもの」から順に決めていきます。
有効なのが、ブース上部に造作を設ける方法です。日経・東証IRフェア2025に出展された東海カーボン株式会社様のブースでは、上部に大きな門型の造作を組み、社名とロゴ、そして証券コードを掲げています。投資先を探している来場者にとって、証券コードは名刺代わりの情報になります。
ここで効いてくるのが周囲の環境です。IRフェアの会場では、規格化されたパッケージブースで出展する企業も多くあります。そのなかで木工による造作を立ち上げると、高さの差がそのまま視認性の差になります。
会場のどこに位置するかを読む
もうひとつ意識したいのが、周辺との位置関係です。大規模な造作を組む企業のブースと隣り合えば、同じ高さの造作を立てても視線を持っていかれてしまいます。逆に少し距離が取れていれば、控えめな造作でも十分に機能します。
小間の位置は申込のタイミングなどで決まることが多く、こちらで選べるとは限りません。それでも、割り当てが出た時点で「周りに何があるか」「どの通路から人が流れてくるか」を確認しておくと、造作の高さや向きの判断がはっきりします。
03ブースのトンマナはIR資料に合わせる
展示会のブースというと、目立つ色を使いたくなります。ただしIRの場面では、派手さよりも一貫性のほうが効きます。統合報告書もコーポレートサイトも会社説明会の資料も、そしてブースも、すべて同じトーンで揃っていること自体が、その会社の姿勢の説明になるからです。
先の事例では、コーポレートカラーである黒と赤を基調に構成し、仕上げをマット調で統一して高級感を出しています。使用するフォントもIR資料に合わせ、ブースだけが浮いてしまわないようにしました。
IR資料を壁面用に組み直す
壁面の展示内容も、ゼロから考える必要はありません。すでにあるIR資料の中身を素材として、ブースの壁面用にあらためてレイアウトし直すという進め方があります。
これには2つの意味があります。ひとつは、来場者が事前にサイトで見ている情報と、会場で見る情報が一致すること。もうひとつは、内容の正確性が担保されることです。
IR情報は数字の扱いに慎重さが求められる領域なので、制作側で新たに文言を起こすよりも、開示済みの資料をベースに再構成するほうが確実です。
ここで必要になるのは、デザインの技術というより「紙で読ませる情報」と「歩きながら見る情報」の違いを理解して組み替える作業です。文字量を減らし、グラフを大きくし、離れた場所から目に入る順番を設計し直す。この工程を丁寧に行うかどうかで、伝わり方が大きく変わります。
04立ち止まった人を「滞留させる」ためのレイアウト
1小間での出展では、壁面と商談スペースを設けるだけでスペースを使い切ってしまいます。この場合、説明は外に向けて行う形になり、来場者は通路に立ったまま話を聞くことになります。通りがかりの人にも届く一方で、聞き手はいつでも離れられる状態です。
2小間に広げられる場合に検討したいのが、講演スペースをブースの内側に設けることです。椅子を並べて座って聞ける場所をつくると、入ってきた人が最後まで話を聞いてくれる可能性が高くなります。
入りやすさと囲い込みは両立できる
内側に囲むレイアウトには、入りにくくなるという弱点があります。これを避けるには、通路側を大きく開けて、通りがかりの人がそのまま入ってこられる導線をつくることが必要です。角小間であれば、2面を開放できるぶん有利になります。
先の事例でも、1日数回行われた講演にはいずれも人が集まりました。座って聞いてもらえるぶん、企業としての強みも伝わりやすくなります。
立ち止まる理由と、とどまる理由は別物
ブースづくりでは、この2つを分けて考える必要があります。上部造作や配色は「立ち止まる理由」をつくるものですが、それだけでは数秒で通り過ぎられます。座れる場所があること、話を聞く時間が明示されていること、手に取れる資料があること。こうした「とどまる理由」をセットで用意して、はじめて滞在時間が伸びます。
なお、IRフェアでは説明員が少人数になりがちです。IR担当や広報担当は人数の限られた部署であることが多く、展示会のように営業部隊を動員できるとは限りません。説明員が全員接客中でも情報が伝わる状態、つまりパネルと映像だけで事業内容が理解できる状態をつくっておくことが重要になります。
05ノベルティは翌年以降も使えるかどうかで選ぶ
来場者向けのノベルティも、ブースとあわせて検討したい要素です。選定の際に意識したいのは、余っても無駄にならないことです。
ノベルティは配布数の読みが難しく、多めに作れば余り、少なく作れば途中でなくなります。年号や開催回を入れず汎用的な仕様にしておけば、余ったぶんを翌年、翌々年の出展や別の場面で使うことができます。先の事例で選ばれたロゴ入りのウェットティッシュも、この考え方に沿ったものです。
IRフェアのように継続出展が前提になるイベントでは、この視点が効いてきます。ノベルティに限らず、什器や造作の一部も再利用できる設計にしておくと、翌年以降のコストが変わります。
06まとめ:IRフェアのブースは「伝わる」を最優先に
IRフェアで目を引く展示ブースをつくるために意識したいポイントを、あらためて整理します。
1. 目的は受注ではなく、認知・理解・応援したいという気持ちをつくること
2. 遠くから見つけてもらうために、上部造作など高さのある要素を検討すること
3. 周囲のブースの状況を読み、埋もれない位置とボリュームを判断すること
4. 配色やフォントはIR資料に合わせ、一貫性で信頼を積み上げること
5. 立ち止まる理由だけでなく、座って聞ける「とどまる理由」を用意すること
6. 継続出展を前提に、翌年以降も使えるものを選ぶこと
ブースづくりで最も効くのは、完成イメージの美しさではなく、その手前にある「誰に何をわかってほしいのか」の整理です。ここが定まっていれば、限られた小間数や予算のなかでも判断に迷わなくなります。
株式会社アドップでは、展示会・IRイベントのブースデザインから設計・施工、ノベルティ制作までを一貫してご支援しています。本記事で触れた事例は制作実績ページでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。出展をご検討中の方は、目的の整理段階からお気軽にご相談ください。
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